横浜市立大学附属病院(脳神経外科)

脳組織の中に異常細胞が増殖する病気を脳腫瘍といいますが、横浜市立大学附属病院の脳神経外科で扱う対象疾患で一番多いのが、この脳腫瘍で、二番目が脊髄疾患となっています。アメリカ国立衛生研究所で脳虚血研究で留学した経験のある川原教授は頭蓋底腫瘍の手術を中心に豊富な手術経験を有しています。

頭蓋底腫瘍とは、脳の深部である頭蓋底に発生する悪性・良性の腫瘍をいい、アプローチの仕方も特殊な方法が必要となります。つまり、脳腫瘍に到達するために脳に分け入るのではなく、頭蓋底の方向から手術を行います。

同教授の頭蓋底手術で最も多いのが髄膜腫と神経鞘腫でいずれも良性です。ただし、良性といっても、さまざまな血管神経が複雑に絡み合いながら腫瘍と癒着している場合も多く、皮一枚を残して腫瘍を取り除く高度な技術が必要とされますので、安心はできません。

間違えば生命にかかわる危険性もあり、一般的手術では腫瘍自体が完全に取り除けないこともあります。残存部に定位放射線をかける併用療法も、取り残しが大きく意識中枢にかかわる場合は治療選択の余地も失いかねません。

そのような事態に陥らぬように術後の長期観察にも責任を持っています。同科における聴神経腫瘍での聴力温存率は6~7割。悪性腫瘍では耳鼻科領域の進行がんも引き受けます。鼻や耳のがんが脳に接すると脳外科の協力は不可欠となります。完全に撮るには周りの正常組織も切除するアンブロックが有効です。形成外科も加わり、腹部の筋肉を移植して再建術を行います。取り切れれば5年生存率は86%。

脳実質内悪性腫瘍に対しては、最先端の機器を導入し、術前のすべての画像情報と術中ナビゲーションとを統合するシステムを開始。さらに電気刺激で機能確認を行うモニタリングを併用し、機能の温存と腫瘍の最大限の摘出を同時に行うことを可能にしました。

腫瘍を取りきることを目指すだけでなく、何を優先するか患者側の要望を尊重し、視力、聴力などの機能保護と、麻痺を残さないために最大限努力するのが同科のモットー。何年か先に機能障害が出ることが実感しにくいこともあるため、良性腫瘍の患者には10年後を想定して話しをします。患者側が自発的に手術を受けたいというタイミングも川原教授は大事にしています。